会社売却本おすすめ4選|EXIT経験者が選ぶ読む順番と使い方
結論: 会社売却本なら『会社売却とバイアウト実務のすべて』が最適解。
私は2012年から2023年の間に3回、自分の会社をM&Aで売却した。最初のEXITは仲介会社の言いなりで動き、LOI(意向表明書)にサインした後で「この条項、まずいのでは」と気づく始末だった。あの損失は本一冊で防げたと今でも思っている。
本記事では、その3回の経験をベースに、今から売却を考えている経営者が「何をいつ読むべきか」を4軸スコアとフェーズ別マップで整理した。書評ブロガーではなく売り手当事者の目線で書いているので、「理論としては正しいが実際の交渉では役に立たない本」は容赦なく低評価にしている。
フェーズ別・読む順番マップ
売却プロセスは大きく3フェーズに分かれる。本もそのフェーズに合わせて選ぶと吸収率が上がる。
フェーズ1|検討初期(「売るべきか」を決める段階)
- まず読む: 『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版』(藤井一郎)
- 次に読む: 『愛の会社エグジット』(吉田学)
この2冊で「M&A仲介の構造的な利益相反」と「感情的な落とし穴」を把握する。売るかどうかを決める前に知らないと、後で後悔する類の情報が詰まっている。
フェーズ2|準備期(「いくらで売れるか」を試算する段階)
- まず読む: 『M&Aで創業の志をつなぐ』(中村悟)
- 次に読む: 『会社売却とバイアウト実務のすべて』(宮崎淳平)
バリュエーションの基礎とDDで何を見られるかを理解する。この段階を飛ばして仲介会社と話すと、相手のペースに乗せられる。
フェーズ3|交渉直前(「どう交渉するか」を詰める段階)
- 必携: 『会社売却とバイアウト実務のすべて』(宮崎淳平)※フェーズ2でも登場するが、交渉直前に再読する価値がある
評価基準(4軸)について
単なる「読みやすい・読みにくい」ではなく、以下の4軸でスコアリングした。
- 実務再現性(35%): バリュエーション・交渉・DD・クロージングを自分で動かせるレベルで書かれているか
- スモールM&A適合度(30%): 数百万〜数億円規模の取引に特化しているか。大企業向け理論に偏っていないか
- 売り手視点の充実度(20%): 買い手・仲介業者視点に偏らず、売り手オーナーの意思決定・感情面まで扱っているか
- 読みやすさ・即効性(15%): 専門知識ゼロでも短時間でエッセンスを掴めるか
各軸の重みはこの順序で設定した。なぜなら「感動できる本」より「使える本」の方が、実際の売却交渉で価値があるからだ。
結論: 用途別おすすめ
今すぐ売却を決断し、3ヶ月以内に動きたい
『会社売却とバイアウト実務のすべて』+『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版』の2冊セット
実務手順(バリュエーション・DD・SPA)と仲介会社との交渉術を同時に押さえることで、即座に動ける判断軸が揃う
3年後のEXITに向けて準備を始めたい
『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版』→『M&Aで創業の志をつなぐ』の順で読む
時間的余裕があるフェーズでは、まず全体構造を理解してから準備計画を立てる方が、後から方針を修正するコストが下がる
M&A仲介会社の選び方・注意点を知りたい
『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版』(1冊目確定)
仲介会社の内部論理・報酬構造・情報開示の非対称性を最も詳しく扱っており、面談前の必読書として他の追随を許さない
「売るかどうか」の意思決定に迷っている
『愛の会社エグジット』→『M&Aで創業の志をつなぐ』の順で読む
感情面の葛藤を整理してから「志をつなぐ」という動機付けを読むと、売却決断の解像度が上がる
後継者不在で事業承継型M&Aを検討している
『M&Aで創業の志をつなぐ』を最初に読む
事業承継という文脈でM&Aを扱っており、補助金・支援制度の情報も含むため、承継型M&Aの入口として最も適合度が高い
スコアリング基準
売却プロセス(バリュエーション・交渉・DD・クロージング)を実際に自分で動かせるレベルで解説しているか
数百万〜数億円規模のスモールM&Aに特化した内容か。大企業向け理論に偏っていないか
買い手・仲介業者視点に偏らず、売り手オーナーの意思決定・交渉・感情面まで扱っているか
専門知識ゼロでも読み進められる構成か。忙しい経営者が短時間でエッセンスを掴めるか
比較表
| 項目 | M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版 | 会社売却とバイアウト実務のすべて 実際のプロセスからスキームの特徴、企業価値評価まで | 愛の会社エグジット―売り手も買い手も幸せになる事業売却 | M&Aで創業の志をつなぐ 日本の中小企業オーナーが読む本 |
|---|---|---|---|---|
| スコア | 88 | 86 | 79 | 82 |
| 評価 | 「仲介会社に任せれば大丈夫」という思い込みを壊してくれる、フェーズ1の必読書 | 全8冊中、実務再現性スコア最高。交渉テーブルに持ち込む参照書として唯一無二の存在 | 売り手視点の充実度で全8冊中トップ。「なぜ売るか」を腹落ちさせる感情整理の本として読む | スモールM&A適合度92点は全8冊中2位。「売る動機を言語化したい」経営者がフェーズ2の入口として読む本 |
| 価格帯 | 1,980 円 | 2,750 円 | 1,760 円 | 1,760 円 |
| 著者 | 藤井一郎 | 宮崎淳平 | 吉田学 | 中村悟 |
| 出版社 | 東洋経済新報社 | 日本実業出版社 | みらいパブリッシング | 日経BP |
| ページ数 | 約304ページ | 437ページ | 約256ページ | 約240ページ |
| 発売年 | 2023年 | 2018年 | 2021年 | 2020年 |
| 推奨フェーズ | フェーズ1(検討初期) | フェーズ2(準備期)・フェーズ3(交渉直前) | フェーズ1(検討初期) | フェーズ2(準備期・全体像把握) |
各商品の詳細

M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版
東洋経済新報社 · 1,980 円
初めてM&Aを検討し始めた段階で、仲介会社の選び方・注意点を把握したい経営者
Good
- ✓仲介会社の利益相反構造を内側から暴いており、騙されないための判断基準が具体的に分かる
- ✓2023年刊行で法改正(M&A支援機関登録制度)にも対応した最新情報
- ✓1,980円で304ページ、コスパと読みやすさのバランスが全8冊中で最高
Bad
- ×バリュエーション計算の具体的な手順は少なく、「価格の決め方」を深く学びたい人には物足りない
- ×著者が仲介会社経営者のため、仲介不要論には踏み込まない
スコア内訳

会社売却とバイアウト実務のすべて 実際のプロセスからスキームの特徴、企業価値評価まで
日本実業出版社 · 2,750 円
売却準備に入り、バリュエーション試算・DD対応・条件交渉を自分で理解したい経営者
Good
- ✓LOI・SPA・表明保証・クロージングの各ステップが437ページにわたって実務レベルで解説されており、辞書として繰り返し使える
- ✓バリュエーション(DCF・EBITDA倍率・純資産法)の計算例が豊富で、自社の概算価格を自分で試算できる
- ✓売り手側の交渉戦術に章が割かれており、条件交渉の勘所が分かる
Bad
- ×中規模〜大型案件の事例が多く、スモールM&A(数千万円規模)には過剰スペックな章も存在する
- ×専門用語が多いため、初めて読む場合はフェーズ1の本を先に読んでから手にとると理解が早い
- ×2018年刊行のため、M&A支援機関登録制度など最新の制度変更は反映されていない
スコア内訳

愛の会社エグジット―売り手も買い手も幸せになる事業売却
みらいパブリッシング · 1,760 円
「本当に売っていいのか」という迷いの段階にある経営者、または従業員・取引先への影響が気になる人
Good
- ✓売り手オーナーの感情・葛藤・後悔のパターンが実例ベースで描かれており、「なぜ売るのか」を整理するのに役立つ
- ✓スモールM&Aの実例が中心で、数千万〜1億円規模の経営者が自分ごととして読める
- ✓256ページを半日で読み切れる構成で、検討初期の情報収集に最適
Bad
- ×実務手続き(LOI・DD・SPA)の解説はほぼなく、法的・財務的な知識は他の本で補う必要がある
- ×著者の仲介会社ビジネスのプロモーション色が一部にあり、中立性に疑問を感じる箇所がある
スコア内訳

M&Aで創業の志をつなぐ 日本の中小企業オーナーが読む本
日経BP · 1,760 円
後継者不在で事業承継としてM&Aを検討している、または「志をつないで売りたい」という軸で相手先を探している経営者
Good
- ✓事業承継・後継者不在という文脈でM&Aを捉えており、「売る=逃げる」ではなく「志をつなぐ」という視点で読める
- ✓中小企業庁の事業承継ガイドラインとも整合しており、補助金・支援制度の情報を合わせて確認しやすい
- ✓240ページでフェーズ2の全体像を短時間で把握でき、準備のチェックリストとして機能する
Bad
- ×バリュエーションの章は概念説明が中心で、自社の価格を具体的に試算するには情報量が不足する
- ×日経BPらしい「中立・優等生」な筆致で、仲介業者への批判的な視点が薄い
スコア内訳
用途 x 予算で選ぶ
| 用途 | 2,000円以内 | 3,000円以内 | 5,000円以内(2冊セット) |
|---|---|---|---|
| 仲介会社に騙されない知識を最速で得たい | M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版 | — | — |
| 感情整理・「売るかどうか」の意思決定 | 愛の会社エグジット | — | — |
| 後継者不在・事業承継型M&Aの全体像を掴む | M&Aで創業の志をつなぐ | — | — |
| バリュエーション・DD・契約交渉を実務レベルで理解したい | — | 会社売却とバイアウト実務のすべて | — |
| 今すぐ売却交渉を始めるための最短コース | — | — | 『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版』+『会社売却とバイアウト実務のすべて』のセット |
| 3年後EXIT向けの意思決定・準備フェーズ一式 | — | — | 『愛の会社エグジット』+『M&Aで創業の志をつなぐ』のセット(感情整理→準備計画) |
よくある質問
まとめ
EXIT経験者の結論
4冊を読み比べて分かったのは、「1冊で全部分かる本は存在しない」という事実だ。ただし、フェーズに合わせて読む順番を守れば、4冊合計でFA不要の判断軸が身につく。
私が初めてのEXITをやり直せるなら、最初の1ヶ月でこの順番で読む。
- 『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版』で構造を理解する
- 『愛の会社エグジット』で感情面の落とし穴を認識する
- 『M&Aで創業の志をつなぐ』で準備の全体像を掴む
- 『会社売却とバイアウト実務のすべて』を手元に置いて、交渉・DD・クロージングの辞書として使う
本を読むのは「仲介会社に任せっきりにしない」ための準備だ。仲介会社は基本的に成約報酬で動く。売り手の利益を100%守る立場ではない。その構造を理解した上で交渉テーブルに座るのと、知らずに座るのとでは、条件が数百万〜数千万円変わることがある。
次のアクション: まず本記事のフェーズ1の2冊を読む。読み終えたら当サイトのDDチェックリスト(スモールM&A DDチェックリスト)も併用すると、準備の解像度がさらに上がる。
著者の関連実装
この記事の著者は1個の関連インタラクティブデモを実装しています。
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