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財務DDの費用相場 — 会計士外注・自力・ツールの使い分けと予算の目安

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スモールM&Aの財務DD

個人・スモールM&Aの財務デューデリジェンス実務 — 見るべき指標・数字の裏取り・費用の現実解・価格交渉への変換

全7本中 3 本目。

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財務DDにいくらかけるべきか。会計士に外注すべきか、自力でやるべきか、その線引きはどこか。スモールM&Aの買い手向けに、費用の相場観と使い分けの判断基準をこの1ページにまとめる。

結論から書く。

  • 会計士によるフルの財務DDは1件あたり50〜100万円が相場
  • 買収価格が数百万円の案件でフルDDを外注すると、DD費用が案件価格の1〜2割を占めて割に合わないことが多い
  • 現実解は「ふるい → 絞り込み → 外注」の順序。一次スクリーニングは自力(またはツール)で行い、生き残った案件の絞られた論点だけを専門家に出す
  • 「DD費用を払う価値がある案件か」自体を一次スクリーニングで判断するのがこの順序の狙いだ

筆者は事業売却(EXIT)を3回経験し、売り手としてDDを受ける側に立った後、スモールM&A向けの財務DDツール(DD Tool)を開発した。相場の数字はそのツールを作る過程で調べた公開情報と市場観に基づく。

会計士フルDDの相場 — 50〜100万円/件

会計事務所やFAS(財務アドバイザリー)にフルの財務DDを依頼した場合の相場は、スモール〜中小規模の案件で1件50〜100万円。対象会社の規模・拠点数・論点の複雑さで上下し、上場企業が絡む案件や複数子会社を持つ対象では数百万円に達する。

この金額で何が得られるかというと、決算書の分析だけではない。税務リスクの検討、簿外債務の調査、会計処理の妥当性検証、経営者ヒアリング、そして報告書という「第三者の意見」だ。金融機関から買収資金を借りる場合、専門家のDD報告書が融資審査の材料になることもある。

つまりフルDDの価値は分析そのものより「専門家の責任で網羅的に見た」という保証にある。この保証が必要な場面では、値切るべきではない。

案件規模別の費用対効果

問題は、その保証にいくら払えるかが案件規模で変わることだ。

買収価格帯 フルDD費用の比率 現実的な選択
〜500万円 価格の10〜20% フルDD外注は過剰。自力の一次スクリーニング+論点があれば部分委託
500万〜3,000万円 価格の2〜10% 一次スクリーニングでふるい、絞った論点を専門家に部分委託
3,000万円〜 価格の数% フルDDを前提に。融資が絡むならなおさら

境界は機械的なものではない。借入を引き継ぐ案件、許認可ビジネス、在庫が重い業種では、価格が小さくても専門家を入れる価値が上がる。逆に、資産が軽く取引構造が単純な事業譲渡なら、上の目安より自力寄りに倒せる。

「ふるい → 絞り込み → 外注」の順序

費用を抑える鍵は、外注をやめることではなく外注の対象を絞ることだ。

  1. ふるい(自力・無料〜低コスト): 検討中の全案件に一次スクリーニングを掛ける。決算書3期分から正常化EBITDA・純有利子負債・CCC・流動比率・自己資本比率・営業利益率の6指標を計算し、業種ベンチマークと比較する。手順は簡易DDチェックリストにまとめた
  2. 絞り込み: ふるいを通過した案件について、赤信号が出た指標・突合で見つかった不一致を論点リストにする
  3. 外注(論点限定の部分委託): 論点リストを持って専門家に相談する。「財務DD一式お願いします」ではなく「役員報酬の正常化とこの借入の実在確認、税務リスクの有無だけ見てほしい」と依頼する

部分委託の費用は依頼範囲次第だが、論点が絞れていれば工数見積りが立つため、フルDDより大幅に抑えられる。専門家の側も、論点が整理された依頼は受けやすい。

重要なのは順序の意味だ。ふるいには「フルDD費用を払う価値がある案件かどうか」を判定する機能がある。100万円のDD費用を掛けた後に見送ると決めるのと、無料のふるいで見送ってから有望案件にだけ費用を掛けるのとでは、複数案件を検討する買い手ほど差が積み上がる。

自力・ツールの費用と時間

外注しない部分のコストも見積もっておく。

  • Excel自力分析: 金銭コストはゼロだが、決算書の転記・指標計算・業種統計の調査・レポート化で案件ごとに数日単位の時間が掛かる。会計知識の下地も必要
  • セルフサービスツール: 筆者が開発した DD Tool は、決算書の数字を入力すると6指標の計算・5段階RAG判定・業種ベンチマーク3種(経産省ローカルベンチマーク・財務省法人企業統計・TKC BAST)との比較までを自動で行う。基本分析は無料で、財務データは外部に送信されない
  • 時間という費用: スモールM&Aは検討する案件数が多いほど良い出会いに当たる。1案件のふるいに3日掛かる体制と30分で終わる体制では、同じ期間に検討できる案件数が桁で変わる

見送り判断も費用対効果のうち

DD費用の議論で見落とされがちなのは、「DDの結果、買わない」も正当な成果だという点だ。50万円のDDで地雷案件を回避できたなら、その50万円は買収後に踏むはずだった損失の保険料として機能している。

ただしスモール案件では、そもそも地雷の大半が一次スクリーニングの段階で見える。債務超過、売上の右肩下がり、CCCの悪化、役員報酬を戻すと赤字になる収益構造——この水準の問題に50万円の外注は要らない。無料のふるいで落とし、外注費は「ふるいでは判定できない論点」にだけ使う。

まとめ

  • 会計士フルDDの相場は50〜100万円/件。保証としての価値はあるが、案件規模との釣り合いで判断する
  • 順序は「ふるい → 絞り込み → 外注」。一次スクリーニングは自力またはツールで無料〜低コストに抑え、外注は論点限定の部分委託に絞る
  • ふるいの機能は案件の選別だけでなく「フルDD費用を払う価値の判定」にある

一次スクリーニングの具体的な手順は簡易DDチェックリストを、財務DD全体の設計は完全ガイドを参照してほしい。ふるいを自動化したい場合は DD Tool をブラウザで無料で試せる。

よくある質問

Q. 会計士に財務DDを依頼するといくらかかりますか?
スモール〜中小規模の案件でフルの財務DDを依頼すると、1件あたり50〜100万円が相場です。対象会社の規模・拠点数・論点の複雑さで上下し、複数子会社を持つ対象や上場企業が絡む案件では数百万円になることもあります。
Q. 買収価格が小さい案件でもフルDDは必要ですか?
数百万円規模の案件では、フルDD費用が価格の1〜2割を占めて割に合わないことが多いです。自力の一次スクリーニングで6指標と突合を確認し、赤信号が出た論点だけ会計士に部分委託するのが現実解です。ただし借入引き継ぎ・許認可・重い在庫が絡む場合は、価格が小さくても専門家を入れる価値が上がります。
Q. DD費用を抑えるにはどうすればいいですか?
外注をやめるのではなく、外注の範囲を絞ります。「ふるい(自力の一次スクリーニング)→絞り込み(論点リスト化)→外注(論点限定の部分委託)」の順序で、専門家には「この借入の実在確認と税務リスクだけ」のように具体的に依頼すると、フルDDより費用を抑えられます。
Q. 部分委託とフルDDはどう使い分けますか?
融資審査に第三者のDD報告書が必要な場合や、買収価格が数千万円を超えて論点が複雑な場合はフルDDに価値があります。一方、一次スクリーニングで論点が数個に絞れている案件は部分委託で足ります。「専門家の責任で網羅的に見た」という保証が必要かどうかが分かれ目です。
Q. DDの結果、買収を見送った場合の費用は無駄ですか?
無駄ではありません。DD費用は買収後に踏むはずだった損失に対する保険料として機能します。ただしスモール案件の地雷の大半(債務超過・売上減・CCC悪化・正常化後赤字)は無料の一次スクリーニングで見えるため、外注費は一次スクリーニングで判定できない論点にだけ使うのが効率的です。