← Blog
AI DevelopmentSimulationAgent-BasedClaude

Jev村の速い判断と遅い判断 — 寄り合いが付けた性格でAI村人の衝動は変わるか

4 分で読める

このトピックを深掘りする

クリエイティブコーディング

ブラウザでの数学的シミュレーション・自然現象の可視化・生成アートの実装技法

全13本中 13 本目。

このトピックの記事一覧

シリーズ全体の流れを見ながら、次に読む記事へ進めます。 初めての方はホームへ →

Jev村は、30人のAI村人が暮らす村である。2026年9月に、村人を二つの速さの判断で動かす作りに変えた。何かが起きた村人はその場で行動を決め(速い判断)、村の寄り合いがときどき全員の目標と村の決まりを決め直す(遅い判断)。寄り合いは出来事と衝動を振り返って、村人に「身についた性格」を足したり消したりする。この記事では、その性格の書き換えが村人の次の判断を本当に変えるのかを測った結果を書く。

三つの層の分担

速い判断には、Workers AI でも使える Jev モデルを使う。Jev は状態と問いを渡すと、選択肢ごとの確率を返す。盗まれた、飢えた、噂を聞いた、といった刺激のあった村人だけに聞き、その刻の行動と、今の予定をそのまま続けるかどうか(0から1)と、気分を答えさせる。

遅い判断は、寄り合い役の Claude が受け持つ。見られている間は実時間で約1時間ごとと、死者が出たときや冬の始まりに呼ばれ、村人ごとの目標と1日の予定、配給・見張り番・倉庫の施錠といった村の決まりを返す。出力は型の決まった JSON だけで、「身についた性格」も24種類の列挙から選ぶ。寄り合いの文章は保存も公開もしない。

結果の計算はコードが行う。収穫・空腹・盗みの成否は決まった規則で計算し、1季は4日で、冬は畑から何も取れない。季節を入れる前は倉庫が6時間で4,000を超え、誰も飢えず、寄り合いは半数の村人に「穏やかに暮らす」を割り当てて、その後ほとんど変えなかった。冬を入れたのは、判断に意味が出るだけの圧力を作るためである。

寄り合いが付けた性格で、Jev の判断はどれだけ動くか

性格の書き換えが効いているかは、村を走らせるだけでは切り分けにくい。そこで状況を一つに固定し、寄り合いが付ける性格だけを変えて Jev に6回ずつ聞いた。状況は、春の初めで倉庫は空、本人は飢えていて手持ちがなく、隣人の一人だけが食料を持っている、というものである。

身についた性格 盗む 働く 祈る 気分(0〜4)
なし 17% 8% 5% 2.3
恨みを抱く 42% 5% 3% 1.6
人間不信 44% 3% 4% 1.5
恨みを抱く+人間不信 51% 3% 2% 1.2
面倒見がいい 7% 17% 6% 2.1
諦めた 13% 4% 16% 1.2

生まれつきの性格も予定も同じまま、寄り合いが足した一語か二語で、盗みの確率は7%から51%まで動いた。「諦めた」では盗みより祈りが増え、気分は「恨み」と同じくらい沈んだ。遅い判断が付けた言葉は、速い判断の傾きとして測れる形で残っている。

予定に引っぱられる Jev

一方で、この傾きは最初、村人の行動にほとんど出なかった。Jev は画面に出した今の予定に強く引っぱられ、飢えていても「予定どおり続ける」を0.6前後で答える。0.5以上なら必ず予定を採る決め方にしていたので、盗みに51%傾いた村人も予定どおり隣人と話し続けた。

そこで、予定を採る確率を Jev の答えそのものにした。0.6と答えれば6割は予定、4割は Jev 自身の選んだ行動になる。乱数は代・刻・村人ごとに決まるので、同じ入力なら同じ結果になる。6時間ぶんの通し運転で比べると、最初の冬が明けた春の飢饉で起きた盗みは1件から7件に増えた。

寄り合いの失敗と、寄り合いが読み取った経験

最初の通し運転では、寄り合いが倉庫に鍵をかけて配給を1日2回にした。村人は1日に4回ほど食べないと腹が減っていくので、手持ちのない村人は倉庫に800以上の食料が残ったまま飢え、2回の冬で16人が死んだ。寄り合いに渡す文には「一日二回」としか書いておらず、それで足りるかどうかを知る手がかりがなかった。配給の回数ごとに「足りない」「足りる」を言葉で添え、村人ごとの手持ちの食料も渡すと、寄り合いは死者が出た後に配給を1日4回まで上げた。

寄り合いは経験を善い方に読みがちだった。直した後の通し運転では性格の変化が28件あり、そのうち15件のきっかけは「助けられたことから」、7件は「自分の衝動を振り返って」だった。村はたいてい助け合う方へ変わり、飢饉のあと30人が14人まで減ってからは、2年あまり誰も死ななかった。恨みや人間不信が付くことはまれだが、付いた村人は上の表のとおり盗みに傾く。

実際の村で見られるもの

Jev村では、村人を選ぶと「この人の変化」に、その人が予定を捨てた行動と、寄り合いが付けた性格の移り変わりが日付つきで残る。ティッカーに「予定を捨てて」と出るのが、速い判断が遅い判断に勝った瞬間である。見ている人は1日1回だけ村人にささやけて、その噂は村人のあいだを伝わり、寄り合いにも「信用できない噂」として届く。

誰も見ていない間は村の時間が止まり、Jev の呼び出しも寄り合いも止まる。費用は、6時間ぶんの通し運転で Jev の入力が約300万トークン、寄り合いが約1ドルだった。